最近、世間では「ChatGPT」が話題になっている。
対話型の人口知能(AI)が、自分の質問に的確に答えてくれるその能力に、世の人々は圧倒され、「とうとうAIの時代が来た」と騒がれている。
自分の目に見える形でAI技術の進歩を目の当たりにし、不安も覚える人も少なくないようだ。
というのも、「AI技術が発展すればするほど、人間の仕事が少なくなる」との懸念があるからだ。
確かに、AIが人間の仕事を奪う可能性は充分あるとは思う。
ただ、我々ASD者にとっては、AIはデメリットよりもメリットの方が多いと思っている。
その理由は、ASD者が、AI学習用のデータを提供することによって、間接的に巨大IT企業(GAFAM)から経済的に養って貰うという未来を想像しているからだ。
AIを作るためには、学習用のデータが必要になる。
これは、どんな種類のAIであっても変わらない。
そのため、GoogleやApple、マイクロソフトなどから構成される巨大IT企業群(GAFAM)は、積極的にデータを集めようとしている。
彼らは当然多くのユーザーを抱えているので、ユーザーから直接データを収集することもできる。
しかし、それには限度があり、より多様なデータを大量に収集するためには、また別の手段を取る必要が出てくる。
そこで有効になるのが、「お金をあげるから、データを下さい」あるいは「データをアノテーションしてください」といった具合に、お金と引き換えでデータを集めたり、既にあるデータを分類するという方法である。
まだ日本国内ではそれほど目立っていないが、米国などでは上記のような方法でデータを収集している企業が多数あり、たくさんの人がお金を稼いでいる。
もちろん、稼げる金額の大小には大きな違いがあるし、いつまで稼げるかという保障もない。
ただ、そうは言っても、障害が原因で働ける分野が限られているASDにとっては、大きな希望になり得ると言って良い。
ASDの人たちは、私を含めコミュニケーションが不得意で、マルチタスクや仕事の急な変更、曖昧な指示なども苦手とする。
そのため、ASDを抱える人はたとえ高学歴であっても、低賃金での労働や無職状態に追いやられてしまうことも少なくない。
障害者雇用が浸透しつつある現代でも、まだまだASDや発達障害への偏見は強い。
日々精神をすり減らしながら、少ないお金を稼ぐしかないという当事者が多いという状況を改善し得るのが、先ほど述べた「学習用データの提供によってお金を貰う」というやり方だと思う。
学習用データの作成、および提供には、パソコンやインターネット環境さえあれば基本的には事足りる。
コミュニケーションは最低限のテキストメッセージで済むし、単純作業が多いからルーティンワークが得意なASDなら混乱なくできる。
まさに、ASD者の天職といっても過言ではないだろう。
日本でも、ウーバーなどを活用して人間関係に囚われずに働く「ギグワーク」が増えてきている。
AI学習用データの提供という仕事も、いずれは国内でも機会が増え、ギグワークの1つに数えられることになると思う。
そして、仮にAI技術が人間の能力の範疇を超える「シンギュラリティ」が起きたならば、ASD者は働くことそのものから解放されるんじゃないか?
という、希望的観測もしている。