今私は北海道に住んでいるということで、北海道179市町村制覇を勝手に目指しています。
免許はないので、使える手段は公共交通機関のみです。北海道内を公共交通機関で移動していると、如何に車が有利で、公共交通機関が不利であるかがよく分かります。
そんな私が考える、北海道内で公共交通機関を使って行くのが難しい自治体トップ3を発表します。
第3位:中頓別町(宗谷)
第3位に関しては、正直決めるのが難しかったですが、とりあえず中頓別町をセレクトしてみました。
中頓別町は宗谷地方に属する自治体で、音威子府村や浜頓別町などと接しています。
中頓別に行くために使える交通機関は、宗谷バスの「天北宗谷岬線」(路線バス)と高速バスの「えさし号」、「天北号」です。
一見するとアクセス方法が3つもあり、充実しているように思えますが、実際はそうでもありません。
まず、天北宗谷岬線。これは音威子府と稚内を浜頓別経由で結ぶという役割を担っており、旧JR天北線を継承しています。
しかし、乗客数は非常に少なく、年々本数が減っています。特に中頓別町内は沿線にあった高校(中頓別農業高校)がなくなったことで需要が急減し、本数も凄まじいペースで減ってしまいました。
2022年現在、中頓別町に行ける天北宗谷岬線は、音威子府方面からは1日2往復、浜頓別方面からは1日4往復しかありません。
高速バス「えさし号」は札幌と枝幸を結ぶ高速バスで、中頓別町内では「小頓別」というバス停で乗り降りできます。
小頓別は中頓別町の中心部ではなく、中心部から少し南(音威子府寄り)にある地域です。ここは小さな集落なので、地元の方以外の人が利用するのは非現実的だと思われます。
高速バス「天北号」は旭川と鬼志別(猿払村)を結ぶ高速バスで、中頓別町内では「小頓別」と「中頓別ターミナル」に停車します。
中頓別ターミナルは中頓別町の中心であり、宿泊施設もあるため、観光客が利用することも十分可能だと思います。
さて、ここまでつらつらと中頓別町へのアクセスを書いていきましたが、なかなかアクセスが大変なことを分かっていただきましたでしょうか。
訪れる場合、私のおすすめは、旭川や名寄、稚内あたりを拠点に、そこから宗谷本線で音威子府に行って、天北宗谷岬線で訪れるという方法です。1日がかりにはなりますが、確実に訪れることができます。
天北宗谷岬線のダイヤは宗谷本線の特急列車に対応しているので、列車からバスへの乗り換えもしやすいかと思います。
第2位:島牧村(後志)
後志地方に位置する島牧村。ここは札幌から少なくとも2回は乗り換えないと行けない自治体です。
札幌から高速いわない号で岩内、岩内から路線バスで寿都へ行き、寿都からまた路線バスに乗り換えて島牧村へ向かいます。
乗り換え回数が多く手間がかかるというだけでなく、寿都と島牧村を結ぶバスの本数が少ないというのも難易度を引き上げています。
寿都と島牧村を結ぶバスは、平日と土曜はニセコバスが、日曜祝日は島牧村が運営するバスが運行しているのですが、不思議なことに平日の方が本数が少ないです。
日曜祝日は1日4往復あり、島牧村営バスは運賃もかかりません。平日に行くのは避けた方が良さそうです。
寿都や島牧村は宿泊施設も少ないため、滞在するのも大変です。岩内であれば多少宿の数が増えるので、岩内を拠点にするのがやりやすいでしょう。
第1位:佐呂間町(オホーツク)
さて、栄えある第1位はオホーツクにある佐呂間町です。
この佐呂間町は驚くべきことに、土休日は町外から路線バスで町内に行くことが一切できません。このような自治体は全国でも珍しいでしょう。
平日であれば、北見や遠軽、網走からバスで佐呂間町に行くことができますが、それも不便です。
佐呂間町は「ふれあいバス」というバスを運行していますが、これは町民が町外の病院へ行くために運行されているようなバスです。
停留所のほとんどは病院の近くで、駅などには寄ってくれません。
駅の近くに位置している病院もあるので観光客の利用もできますが、使いづらいのは否めません。
佐呂間町には、上記の路線バスだけではなく、高速バスで行くこともできますが、これも不便です。
札幌と知床を結ぶ「イーグルライナー」という高速バスが佐呂間町の若佐に停車しますが、その到着時間はなんと午前3時30分です。夏至の時期でもまだ薄暗い時間帯です。
イーグルライナーが札幌を出るのは午後23時過ぎなので、佐呂間町で降りる場合は4時間ちょっとしか寝られません。それに午前3時台に降りたとして、朝までどう過ごせば良いでしょうか。
夏場ならともかく、寒い冬ならば外で暇をつぶすこともできません。かといって、若佐にはセイコーマートなどのコンビニも、24時間営業の飲食店もありません…
地元の方ならともかく、観光客が使うには無理があると言わざるを得ません。
となると、路線バスを利用するしかありませんが、路線バスは先ほど述べたような有様です。
だからこそ、佐呂間町は道内で最も行きづらい自治体と言えるのです。
今後はますます増える、行くのが難しい自治体
北海道は札幌都心部を除き、車が幅を利かせている圧倒的車社会です。
ローカル鉄道、路線バスは減便、減車が続き、廃止も珍しくはなくなっています。
今後も公共交通の縮小、廃止は道内の至る所で見受けられるようになるでしょう。
それは人口減少、地域産業の衰退という要素が大きく関わっており、不可抗力という面もありますが、日本国政府や北海道がローカル鉄道、バスの維持管理に関与せず、地方自治体や企業に責任を擦り付けているのも事実です。
そしてこのような国家や道を創り上げてきたのは、他でもない選挙権のある全ての日本国民でしょう。
国民が公共交通の大切さに気付くのは、いったいいつになるでしょうか。国家が高齢化し、車を運転出来ない老人が加速度的に増えている中、国民は公共交通を削る姿勢を支持しています。
「合理化」の名の下に、「役に立たない」とされてきたものを排除することは、必ずしも正しいことではないということを多くの日本人は学んできたはずです。
しかし殊に公共交通に関しては、それを理解している国民は僅かです。北海道のみならず、日本国全体の公共交通がボロボロになって初めて、国民は今までの施策が間違っていたことに気が付くのでしょうか。
それでは遅すぎます。公共交通機関を使って、どこかに行くというのは当たり前のことであって然るべしです。
佐呂間町のように、公共交通機関を使って町外からやってくることが非常に困難な自治体が増えれば、地域はより速いペースで衰退し、それと同時に国家も衰退することでしょう。
国の衰退を食い止め、社会を復興させるためにも、今一度公共交通の大切さを再確認する必要があると思います。