2022年11月13日から18日まで、十勝の旅をしていたのだが、そこで行った上士幌町図書館で見た、「北の大地に移り住む―北海道で生活するための完全マニュアル〈十勝編〉」という本について、少し書きたいと思う。
どんな内容の本か
この本は、1990年に発売された本で、北海道の十勝地方へ移住したい人を対象に、実際に移住した人の体験記や、十勝地方の特徴、企業など移住者が欲しいと思われる情報が多数載っている。
内容に関しては、全般的には面白いし、十勝地方について知る上ではかなり役立つコンテンツにはなっているのだが、一部「時代だなあ」と思わせるような表現もあり、おそらく現代でそのまま刊行することは難しいと思われる。
現代では難しい?表現について
具体的には、「十勝地方の不満」を投稿者が述べ、それに作者(?)が返答するというコーナーで、「十勝はドロボーが多い」と書いている人がいたのだが、
それに対する「返答」で、「十勝の人はいちいち鍵をかけたりしないから、ドロボーに狙われやすい」と。
ここまでは別に普通のことだが、その後に「でも、ドロボーする人は十勝管外の人」と締めくくっていたのである。
このような、「犯罪をする人は『外』の人間」という表現は、割と色々な場面で出てくることで、有名どころでは
人気漫才師であった「上岡龍太郎」が、「大阪のひったくりは和歌山か奈良から来た奴ら」と発言したことが知られている。
上岡氏がこの発言をした時期は具体的には分からないが、おそらく昭和以前の話だろう。当時は特に問題にされることはなかったのだろうが、今ならば非難は免れないだろう。
この本は、移住希望者に十勝をアピールするための本だ。それにもかかわらず、「ドロボーは十勝管外の人」という表現をするのは、十勝管外出身者である移住者(読者)を萎縮させることに繋がらないだろうか。
もし現代に同じような本が出ることがあれば、流石にこのような表現は削除されると信じたい。
その他、気になったこと(「十勝は車社会」について)
その他、読んでいて印象に残ったのは、「十勝は車社会」というコラムである。
「十勝地方は公共交通が貧弱だから、猫も杓子も車を持つ」という内容なのだが、その中で、
「車を持っていない男は十勝では厳しい」だとか「男は女性よりグレードの高い車を持っている必要がある」などと書かれていたのである。
田舎出身である私が察するに、上記のことはほとんど事実であることは間違いないが、これも「バブル期」という時代がさせた特殊表現だろう。
この本が書かれた当時は違うのかもしれないが、現在は若い人だけでなく、お年寄りが新しく移住することも珍しくなくなっている。
もし現代に似たような本が出ることがあれば、車社会のことだけでなく、少ない公共交通をどう使うかを指南する内容があると、より良い内容になると思った。