突然だが、日本国内には「世界レベルの豪雪都市」があちこちにあることは、周知の事実であると思う。
しかし、いざ「世界レベルの豪雪都市とはどこ?」と聞かれると、ほとんどの人は「札幌」とか「青森」とか「富山」などと言い出す。
これは半分正しいが、半分間違っている。確かに世間一般で語られる「世界最強の豪雪都市」には、札幌や青森、富山といった地域が入ってくる。
しかし、日本にはまだまだこれらを上回る「豪雪都市」がある。
そこで今回は、多数の豪雪地帯を抱える北海道内において、最強の「豪雪都市」はどこかを調べて行きたい。
アメダスのデータを活用する
北海道内の豪雪都市を調べるため、気象庁が公開している「アメダス」の積雪深データを用いる。なお、資料不足値(]という記号が付いている値)は使わない。
また、今回は調査対象を「豪雪都市」に限定するため、北海道内全てのアメダス地点を調べるのではなく、
「市」の中心部にある地点や、「人口が1万を超える町」の地点(こちらも中心部)に限定したいと思う。
北海道14振興局の「豪雪都市」代表を選出
それでは、北海道を14の振興局に分け、1つ1つ選りすぐりの豪雪都市を見つけていく。
アメダスのデータを用いることは先ほども説明した通りだが、データを過去数十年遡って調べるのは大変なので、過去20年(2002~2022)のデータだけを使う。
宗谷総合振興局
まずは、宗谷地方から。宗谷地方にある「市」は、稚内市のみ。そして、人口が1万を超える「町」は1つもない。
したがって、ここでは「稚内」のアメダス地点だけを調べる必要がありそうだ。
「稚内」の積雪深を調べてみると、2020~2022年で最も値が多かったのは、113cm(2013年)だった。
結論:宗谷地方代表「稚内」⇒113cm
上川総合振興局
江丹別、幌加内、占冠など、早々たる「寒い地域」を抱える上川だが、豪雪都市の実力はどうか。
上川地方にある「市」は、旭川市、名寄市、士別市、富良野市の4市。人口が1万を超える「町」は、東神楽町、上富良野町の2町である。
それぞれの中心部に対応するアメダス地点を調べてみると、最積雪深は
- 旭川市「旭川」:117cm(2004年)
- 名寄市「名寄」:151cm(2013年)
- 士別市「士別」:不明(積雪深は計測していない)
- 富良野市「富良野」:119cm(2021年)
- 東神楽町「東神楽」:87cm(2021年)
- 上富良野町「上富良野」:不明(士別と同様)
ということで、上川代表は、「名寄」の151㎝となった。
留萌振興局
留萌地方にある「市」は、留萌市のみで。人口が1万を超える「町」は1つもないから、「留萌」だけを調べる。
留萌の最積雪深を調べると、過去20年では154cm(2013年)が最高であった。
ということで、留萌代表は、「留萌」の154cm。
オホーツク総合振興局
オホーツク地方にある「市」は、北見市、網走市、紋別市の3市。人口が1万を超える「町」は、遠軽町、斜里町の2町である。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 北見市「北見」:171cm(2004年)
- 網走市「網走」:143cm(2004年)
- 紋別市「紋別」:121cm(2004年)
- 遠軽町「遠軽」:156cm(2004年)
- 斜里町「斜里」:125cm(2008年)
ということで、オホーツク代表は、「北見」の171cmとなった。
根室振興局
根室地方にある「市」は、根室市のみ。人口が1万を超える「町」は、中標津町、別海町の2町である。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 根室市「根室」:51cm(2015年)
- 中標津町「中標津」:156cm(2015年)
- 別海町「別海」:111cm(2015年)
ということで、根室代表は、「中標津」の156cmとなった。
釧路総合振興局
釧路地方にある「市」は、釧路市のみ。人口が1万を超える「町」は、釧路町のみである。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 釧路市「釧路」:48cm(2010年)
- 釧路町:不明(町中心部にアメダス地点がない、「知方学(ちっぽまない)」という地点が町内にあるが、積雪深は計測していない。)
ということで、釧路代表は、「釧路」の48cmとなった。
十勝総合振興局
十勝地方にある「市」は、帯広市のみ。人口が1万を超える「町」は、音更町、幕別町、芽室町の3町である。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 帯広市「帯広」:111cm(2004年)
- 音更町「駒場」:不明(積雪深は計測していない)
- 幕別町:不明(町内にアメダス地点がない)
- 芽室町「芽室」:120cm(2018年)
ということで、十勝代表は、「芽室」の120㎝となった。
日高振興局
日高地方には「市」がなく、人口が1万を超える「町」は、新ひだか町と浦河町、日高町の3町である。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 新ひだか町「静内」:38㎝(2014年)
- 浦河町「浦河」:34cm(2021年)
- 日高町「日高」:114cm(2015年)
ということで、日高代表は、「日高」の114cmとなった。
胆振総合振興局
胆振地方にある「市」は、苫小牧市、室蘭市、登別市、伊達市の4市。人口が1万を超える「町」は、白老町のみである。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 苫小牧市「苫小牧」:61cm(2022年)
- 室蘭市「室蘭」:54cm(2005年)
- 登別市「登別」:144cm(2012年)
- 伊達市「伊達」:不明(積雪深は計測していない)
- 白老町「白老」:47cm(2012年)
ということで、胆振代表は、「登別」の144cmとなった。
空知総合振興局
空知地方にある「市」は、岩見沢市、美唄市、砂川市、滝川市、深川市、赤平市、歌志内市、三笠市、芦別市、夕張市の10市。人口が1万を超える「町」は、栗山町、長沼町の2町である。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 岩見沢市「岩見沢」:205cm(2021年)
- 美唄市「美唄」:167cm(2018年)
- 砂川市:不明
- 滝川市「滝川」:145cm(2014年)
- 深川市「深川」:142cm(2012年)
- 赤平市「赤平」:不明
- 歌志内市:不明
- 三笠市:不明
- 芦別市「芦別」:111cm(2005年)
- 夕張市「夕張」:182cm(2012年)
- 栗山町:不明
- 長沼町「長沼」:不明
ということで、空知代表は、「岩見沢」の205cmとなった。
石狩振興局
石狩地方にある「市」は、札幌市、江別市、北広島市、恵庭市、千歳市、石狩市の6市。人口が1万を超える「町」は、当別町である。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 札幌市「札幌」:137cm(2013年)
- 江別市「江別」:不明
- 北広島市:不明
- 恵庭市「恵庭島松」:115cm(2006年)
- 千歳市「千歳」:77cm(2008年)
- 石狩市「石狩」:157cm(2006年)
- 当別町:不明
ということで、石狩地方代表は、「石狩」の157cmとなった。
後志総合振興局
後志地方にある「市」は、小樽市のみ。人口が1万を超える「町」は、俱知安町、余市町、岩内町の3町である。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 小樽市「小樽」:172cm(2006年)
- 俱知安町「俱知安」:239cm(2005年)
- 余市町「余市」:196cm(2006年)
- 岩内町:不明
ということで、後志代表は、「俱知安」の239cmとなった。
檜山振興局
檜山地方には「市」がなく、人口が1万を超える「町」もない。
したがって、大変残念ではあるが、今回のルールでは檜山代表を選出することはできない。
仕方がないのでルールを少し改変して、人口が8000を超えていたら良いとしよう。そうすると、江差町とせたな町が入る。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- せたな町「せたな」:不明
- 江差町「江差」:51cm(2018年)
ということで、檜山代表は、「江差」の51cmとなった。
渡島総合振興局
渡島地方にある「市」は、函館市と北斗市の2市。人口が1万を超える「町」は、七飯町、森町、八雲町の3町である。
それぞれの最積雪深を調べてみると、
- 函館市「函館」:91cm(2012年)
- 北斗市「北斗」:不明
- 七飯町:不明
- 森町「森」:103cm(2012年)
- 八雲町「八雲」:121cm(2012年)
ということで、渡島代表は、「八雲」の121cmとなった。
北海道14振興局の「豪雪都市」代表
さて、ようやく14振興局の代表が出揃った。改めて、その顔ぶれを見てみる。
- 宗谷地方:「稚内」(113cm)
- 上川地方:「名寄」(151cm)
- 留萌地方:「留萌」(154cm)
- オホーツク地方:「北見」(171cm)
- 根室地方:「中標津」(156cm)
- 釧路地方:「釧路」(48cm)
- 十勝地方:「芽室」(120cm)
- 日高地方:「日高」(114cm)
- 胆振地方:「登別」(144cm)
- 空知地方:「岩見沢」(205cm)
- 石狩地方「石狩」(157cm)
- 後志地方「俱知安」(239cm)
- 檜山地方「江差」(51cm)
- 渡島地方「八雲」(121cm)
同じ北海道内でも、場所によって積雪深がかなり違うことが分かると思う。特に釧路や檜山は、100cmも積もっていない。
北海道内最強の「豪雪都市」は?
さて、これでやっと「北海道内最強の豪雪都市」が分かった。
それは、後志地方の俱知安町(239cm)だ。次いで空知地方の岩見沢市(205cm)、同じく空知地方の余市町(196cm)だった。
やはり、北海道内でも空知地方や後志地方で、積雪が多くなりやすいことが明らかになった。
俱知安町を「都市」と見なすかは議論の余地があるかもしれないが、俱知安町は人口が約1万5000あり、後志振興局も設置されている。いわば、「後志の県庁所在地」的場所だから、都市と見なしても問題はないと思う。