今回は、道民の喫煙率について、色々と書き連ねてみたい。
北海道民の喫煙率は全国トップクラス
本州(首都圏)から北海道に移住した私が常々思うのは、「北海道の人はタバコを吸う人が多い」ということ。
喫煙率に関するデータ(国民生活基礎調査による都道府県別喫煙率データ:2019年)によると、47都道府県で最も喫煙率が高いのは北海道で、その値は22.6%となっている。
男女別に見ると、男性が31.7%、女性が14.8%だ。
男性の値は全国的に見ると、際立って高いというわけではなく、例えば東北地方各県(青森、岩手、宮城、秋田、福島)や九州の佐賀県の男性喫煙率は、北海道のそれよりも高い。
ただ女性の値は、他の都府県から抜きん出ているのが実情だ。喫煙率が高い傾向にある東北でも、例えば青森は11.2%、福島は10.5%となっている。
つまり、北海道民の喫煙率が全国トップであるのは、男性の喫煙率が全国上位にあり、かつ女性の喫煙率がトップであることが原因だと考えられる。
ではなぜ、そのような状況になっているのだろうか?個人的に分析してみたい。
女性の喫煙率が高い理由を考える
まず初めに、北海道に住む女性の喫煙率が全国トップである理由を考えてみたい。
「北海道の女性」を語る際、書物などでも良く出てくるのが、「北海道は男女同権意識が強い」という話である。
そうは言っても、ジェンダーギャップが未だ残る日本なので、欧州や社会主義国のような「男女同権」はないとは思う。
ただ、北海道は女性が控えめでいることが美徳とされることは少なく、女性でも気軽に自己主張できる土壌が備わっていると考えられる。
日本の一部では今でも、家父長制的文化が残っていたり、女性は男性の気持ちを考えて行動することを強いられたりする地域もあるが、少なくとも北海道ではそのような文化はほとんど見られないと思う。
北海道では男女同権意識が強いと言われる所以は、開拓を経験してきたという歴史にあると言われている。性の区別なく、日々の生活のため働くことを求められてきたからこそ、男女を区別して考える文化が少ないのかもしれない。
そしてそのような背景から、女性も男性と同様に気軽にタバコを吸う人が増えたのではないか。それが結果として、女性の喫煙率全国1位という状況につながっていると、考えられなくもない。
喫煙率が高い他県との共通点を考える
北海道の他にも、喫煙率が高い都道府県は存在する。先ほども少し挙げたように、東北地方の各県は、比較的喫煙率が高いことが分かっている。
このようなことを述べると、「田舎は娯楽がないから皆タバコを吸う」という人もいるが、それは違うと思う。
確かにタバコは嗜好品であって、手軽に心地よい気分になれる代物ではあるが、全国各地のデータを見ると、人口の少ない田舎の県であっても、喫煙率が低い地域もある。
それに、娯楽がほとんどなかった時代と比べ、現代は田舎でも簡単にアクセスできる娯楽がいくらでもある。タバコが単なる娯楽なら、とっくに取って代わられているはずだ。
というわけで、「田舎は喫煙率が高い」と断定するよりも、「気候が厳しい北国は喫煙率が高い」と考える方がしっくりくるのではないか。
ではなぜ、北国は喫煙率が高いのか。北国というと、「雪が降る」という点が共通するが、同じく雪が降る北陸や新潟、長野などの数値はそれほど高くはない。
他に北国という言葉から連想されるのは、やはり冬の厳しい寒さ、そして北国特有の忍耐強さではないだろうか。
このように考えると、厳しい気候を乗り越えるための忍耐力と、タバコには密接な関係があると考えられなくもない。
北海道特有の歴史も関係している?
その昔、北海道には多数の労働者が仕事を求めてやってきた時代があった。炭鉱がその代表例で、かつて炭鉱があった地域の発展度合いを見ると、それだけ多くの人、そして富が集中していたことが分かる。
彼らが従事する仕事は肉体労働を伴うことが多かったため、当然の如く体力のある男性が労働者の多数を占めていた。
タバコに対する風当たりが強くなかったという時代背景もあり、彼らのほとんどは日常的にタバコを吸っていたと考えられる。
炭鉱は昭和時代まで残っていたから、当時労働者だった人たちもまだ北海道にはたくさん残っていると思う。彼らは高齢者になっていると思われるが、それでもまだ引き続きタバコを吸い続けている人も少なくないのではないか。
つまり、北海道の産業を支える労働者だった高齢者たちが、今現在も現役当時と同じくタバコを吸い続けているため、全体の喫煙率も高くなっているという仮説である。
ただ、労働者時代は北海道に居たとしても、現役引退後地元に戻った人も少なくないだろうし、この仮説は無理があるかもしれない。
北海道における「保守的な考え方」との関わり
北海道に住む人はしばしば、合理的に思考していて、保守とは真反対の人が多いと言われる。
確かにこれは一理ある。例えば、政治に関して言うと、北海道は他県と比べてリベラル系の政党が支持を集めやすい傾向がある。
また、北海道民は「新しいもの好き」とも言われることがある。他県の人たちよりも新しいものを導入する抵抗感が少ないため、北海道で新製品・新スタイルを先んじて取り入れて、その反応を見るという企業もある。
このように、北海道民は他の「地方」と比較すると新しいものを取り入れることへの抵抗が少ない地域なのだが、それでも一部「保守的」なところもある。
その「保守的」な部分こそ、禁煙ブームが始まってから長い月日が経つのにも関わらず、依然として喫煙率が高いという現象を説明できるもっともらしい理由ではないだろうか。
北海道は津軽海峡を隔てて、本州から距離が離れているため、人々の行動様式が本州(とりわけ首都圏)よりも遅れがちである。
行動様式というものは新商品や新しいサービスとは違い、企業が持ってきてくれるものではない。人々が知り、自ら実践していくことで様式は変わっていく。
北海道民は北海道から出て、「内地」で生活することも少ないため、本州における行動様式を学習する機会が少なく、結果として北海道特有の文化が未だ残っていると考えられる。
その北海道特有の文化の1つとして、「喫煙率の高さ」も説明できるのではないだろうか。
結論:はっきりした理由は分からない
ここまで、北海道の喫煙率が高い理由を考えてみたが、はっきりとした理由は分からなかった。
おそらく、「北海道における女性像と、女性の喫煙率の高さ」「北国(北海道・東北)特有の事情」が関係するのは間違いないが、それ以外にも何か要因があるのだろうか。
今後も新しく分かったことがあれば、記事にしていきたいと思う。