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【ASD】障害者雇用における新卒就活について

ASD関連

今回は障害者雇用における新卒就活について、自分の経験をもとに話していきたいと思う。

結論から言うと、ASD者が障害者雇用において「新卒」で就職することは、極めて難しいことだと考えた方が良い。

私は新卒時、障害者雇用をしている企業数十社に応募したが、どこにも内定が貰えなかった。
内定ゼロに陥ったのは、私の実力が及ばなかったからだと考えられるが、
他にももっともらしい理由がある。

理由①新卒障害者採用における「ターゲット」

かつての障害者雇用では、身体障害を持つ人が多く採用されており、精神障害、発達障害を持つ人は、採用されづらい状況が続いていた。

しかし、法定雇用率が高まるにつれ、精神、発達障害当事者が障害者雇用で採用されることは徐々に増えていった。

一方で、新卒採用に関しては、まだまだ精神、発達障害当事者に不利な状況が続いている。

その根拠は、新卒採用における採用フローにある。

新卒採用で「障害を持つ学生を受け入れている」とアピールする企業は、大企業がほとんどだ。

大企業における新卒採用では、まず志願者にSPIや性格検査を受けさせ、その結果をもとに面接に通すかを決定する企業が多い。

さて、このSPIや性格検査だが、これは発達障害当事者にとって極めて不利な試験だと言える。

SPIは計算や読解問題など、さまざまな問題が出てくる。
問題そのものはそれほど難しくはないが、制限時間が短いため、
素早く問題を解く力が求められる。

しかしながら、発達障害当事者には処理速度が遅かったり、特定の分野だけが著しく苦手という人が少なくない。

そういった人たちにとって、SPIで好成績を収めることは不可能に近い。

また、性格検査にも問題点がある。
性格検査における質問の中には、精神障害や発達障害の症状と似た文言が書かれていることがある。
(例えば、「臨機応変に対応することは苦手ですか」など)

検査の意図ははっきりしないが、もしかしたら精神、発達障害っぽい人を省くために使われているのかもしれない。

このようなことから考えると、残念ながら新卒の障害者採用は、
精神障害や発達障害を持つ人を最初からターゲットにしていないと考える方が自然である。

理由②倍率が高すぎる

障害者雇用は、国によって定められた「法定雇用率」を満たす分だけ障害者を採用すれば良いのだから、当然枠は小さくなる。

ましてや、新卒採用ともなれば、さらに競争率が高まる。
なぜなら、新卒採用は一般の障害者雇用と比べて、かなり待遇が良いからだ。

特例子会社などでは、大卒者でもそれほど賃金は高くはないが、
大企業の場合、「障害者枠」でも初任給が20万円を超えていることはよくある。

手取り、あるいは額面でさえも月10万円台のポジションばかりの障害者枠。
その中で、初任給が20万円超えという枠があれば、応募が殺到するのは当然のこと。

その競争を勝ち抜くには、たとえ障害者枠でも極めて優秀な人間でなければ難しい。

理由③ASDに不利すぎる採用選考

新卒障害者枠は、その性質上、限りなく健常者に近いか、極めて優秀な発達障害当事者でなければ、内定を取ることは難しい。

その理由は①と②の他に、新卒障害者枠における採用選考が、通常の障害者雇用とは大きく異なることからも説明できる。

一般的な障害者雇用では、応募者は事前に企業に「実習」をするなどして会社に名前を売り、それから面接を受けるという形態がよくある。

そのため、多少コミュニケーション能力が劣っている人でも、その仕事ぶりが評価され、採用される可能性が高まる。

しかしながら、新卒障害者枠は一般枠とほぼ同じ採用フローを辿るため、書類選考や面接に強い学生でなければ、容赦なく落とされる。

書類選考ではいわゆる「ガクチカ」(学生時代に頑張ったこと)を書かされることが多い。
これは企業側が学生の「主体性」「協調性」などを見るために行うもので、他人との交わりが苦手なASD者が、人事を納得させる「ガクチカ」を書くことは難しい。

面接は基本的に2,3回実施され、徹底的に粗探しが行われる。
コミュニケーション能力に乏しいASD者にとって、面接をくぐり抜けるのは
(たとえASDを公表していようと)無謀だと言わざるを得ない。

したがって、このような採用選考を突破できるのは、ASD要素の薄い、
限りなく健常者に近い発達障害当事者か、何か極めて優秀な側面を持っている当事者か、どちらかということになってしまうのだ。

結論:受からない前提で挑戦しよう

今回は私の経験をもとに、新卒障害者枠がASD者にとって、如何に無謀なことであるのかを説明してきた。

あくまでも私の例だけをもとに話しているので、これが全てのASD者に当てはまるとは限らない。

しかしながら、特に大企業であればあるほど、ASD者が新卒で障害者枠の内定を取ることが困難になるのは確かだと思う。

なので、新卒障害者枠に挑戦しようとする方がいたら、言い方は悪いが「落ちる前提」で挑戦してみるのが良いかもしれない。

応募書類を書いたり、面接を経験したりすれば、今後の就職活動にも大いに役立つし、企業研究や業界研究を通じて、社会や企業のことをより深く知ることができる。

たとえ内定がゼロでも、学生時代の就活は決して無駄なことではないということを覚えておいて欲しい。

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